利き手が早く決まった子ほど、言葉の伸びが良い傾向がある
「この子、なんとなく右手ばっかり使うなあ」
──そんな様子が見られる赤ちゃんは、言葉の発達も早い傾向があることが、近年の研究で明らかになっています。
手の利きは「道具の使い方」だけでなく、「脳の働き方」や「言葉の覚え方」にまで関わってくるのです。
ただし、これはあくまで統計的な傾向。
利き手が遅くても、語彙力は伸ばせます。
でも、“ほんのちょっとしたサイン”を見逃さないことで、子どもの発達をより深く理解するヒントになるかもしれません。
🔍 背景:利き手と脳、そして言葉はどう関係しているの?
◾ 利き手はいつ決まるのか?
- 多くの子どもは2~4歳ごろまでに、はっきりとした「利き手」が見られるようになります。
- しかし中には、乳児のうちから一貫して右手や左手を使う子もいます。
これは、「脳の発達スピードに差があるサイン」と考えられています。
◾ 実験1:乳児の利き手と2歳の言語スキル(Nelsonら)
- 6〜24ヶ月の乳児38名を追跡した研究では、
- 生後6〜14ヶ月の段階で利き手が安定していたグループの方が、
- 24ヶ月の時点で、語彙数・言語理解力が高かったという結果が出ています。
→ 指先の使い方が早くから安定している子どもは、言葉も早く覚える傾向があるとされます。
◾ 実験2:道具操作スキルと発語(Michelら)
- さらに、道具を片手で安定して使える子どもほど、
- 認知スキル(ものを分類する、他人の行動を真似する)も高く、
- ジェスチャーや発語のタイミングが早まる可能性があると報告されています。
→ 「手の使い方」は、単なる身体操作ではなく、“思考と伝達”の基盤にもなっているのです。
◾ 実験3:右手での指さしと語彙(van Rootselaarら)
- 3~5歳児81人を対象にした研究では、
- 右手で指さしを多用する子どもは、語彙力が高いという相関が見られました。
- 逆に、社会性や実行機能とは特に関連がなかったとのこと。
→ 指さしの「どちらの手を使うか」も、脳の言語中枢の発達と何らかの関連があるのかもしれません。
📒 豆知識トリビア:保育現場や家庭からの“気づき”
▶ 親の声
「1歳前からスプーンを右手でしか持たないのに気づいて、もしかして利き手が決まったのかなと。
でもその子は言葉も本当に早くて、1歳半には ‘お水ちょうだい’ と2語文まで出てました。」
▶ 保育士の現場観察
「右手で指さして『あれ』って言うのが早かった子は、やっぱり語彙が豊富になるのも早かった。
反対に、両手を同じくらい使う子は、言葉の出が少しゆっくりな気がしますね。」
🌀 もちろん例外もあるが、実感ベースでも“手とことば”の関係はよく語られています。
🧠 考察:なぜ「利き手」が言葉に関係するのか?
🎯 1. 脳の半球優位性が関係?
- 右利きの多くは、左脳が言語処理を担当
- 乳児期から右手ばかり使う子は、左脳の活性化が早い可能性がある
→ 「利き手の早期確立 = 言語中枢の発達の早さ」と見る研究者もいます。
🎯 2. 運動の安定が、認知のリソースを生む
- 手の使い方が安定していると、脳が他の機能(言語、推論など)に集中できるようになる
→ 「体の制御 → 脳の自由」が生まれるという、発達心理学の基本構造です。
🎯 3. ジェスチャーとことばの橋渡し効果
- 指さしや道具使用がスムーズになると、非言語コミュニケーションが豊かになり、
- それがやがて言語的表現に移行しやすくなる
→ 「言いたいことを“指”で伝える」経験が、「言葉で伝える」準備になるのです。
🌱 実践と選択肢:「気づく」ことから始めてみよう
この研究が教えてくれるのは、
「右利きがエラい」「早くしゃべるのが正義」ではありません。
むしろ──
- 手の使い方や指さし行動をよく観察することで、
- その子なりの認知・発達のスタイルに気づける
そんな**“発達のサイン”を拾う力**が、育児にも教育にも活きてくるのです。
🧩 実践アイデア:
| 実践 | 内容例 |
|---|---|
| 手の観察 | 右手?左手?どちらを自然に使ってる? |
| 指さしの促し | 絵本で「どこ?」と聞いて指を促す |
| 道具の選び | スプーンやペンの太さ・握りやすさを調整 |
| 言葉の補完 | 指さしと一緒に語彙を繰り返し語る |
🛟 安心してほしいこと
最後に、よくある不安に答えます。
- 「うちの子は利き手がなかなか決まらないけど大丈夫?」
→ 大丈夫です。小学校入学頃まで両利きでもまったく問題なし - 「左利きだと、言語発達に不利?」
→ 左利きでも、言語中枢が右脳にあるわけではないことが多く、影響はほとんどありません。 - 「早口な子=利き手が早いってこと?」
→ 話す速さやおしゃべり度とは別問題です。
🌀 つまり、指先に注目することで「成長を比べる」のではなく、
「成長を観察し、応援する」視点を持てるようになります。