🐦「ズグロモリモズ」って何者?──名前のインパクト以上に危険だった
「ズグロモリモズ」という名前を聞いて、「何かかわいい鳥かな?」と思ったあなた。
それは半分正解で、半分どころではないくらい間違いです。
ズグロモリモズ(学名:Pitohui dichrous)は、ニューギニア島に生息する毒を持つ鳥。その羽根には、人間にも影響するほどの強力な神経毒が含まれており、「世界でも数少ない“毒鳥”」として知られています。
見た目はどこか愛らしく、日本語に訳せば「頭が黒い森の百舌(モズ)」という意味になるものの──羽一枚で人間に深刻なダメージを与える存在だという事実に、多くの人が驚かされるのです。

画像:Berichard(編集:markaharper1) / Wikimedia Commons
ライセンス:CC BY-SA 2.0
🌍 どこに住んでいるの?ズグロモリモズの生息地と生態
この鳥が確認されているのは、インドネシア領・パプアニューギニアおよび周辺の熱帯雨林地域のみ。
日本には生息しておらず、野生下で出会うことはまずありません。
- 分類:スズメ目/コウライウグイス科
- 分布:ニューギニア島全域(標高300〜1800m程度)
- 生態:果実・昆虫を中心に雑食性、特定の毒虫を捕食
この地域特有の生態系と共進化し、体内に毒を“取り込んで利用する”という特殊な適応を遂げた生き物なのです。
☠️ なぜ毒を持つの?──その仕組みと進化
▶ バトラコトキシンという猛毒を羽毛に蓄積
ズグロモリモズが持つ毒は「バトラコトキシン(batrachotoxin)」と呼ばれます。
これは、ヤドクガエルの一種と同様の毒で、人間の神経を麻痺させ、呼吸停止すら引き起こしかねないほどの強烈な神経毒です。
重要なのは──この毒はズグロモリモズが自分で作り出しているわけではないということ。
毒性を持つ甲虫(Choresine属)を食べることで体内に毒を蓄積しているのです。
つまり、「食べることで毒になる」という、**自然界でも非常に稀な“毒の獲得戦略”**を取っているわけです。
▶ 防御?それとも進化上の副産物?
カラパイアの解説によると、この毒は「外敵や寄生虫から身を守るため」に役立っているとされ、特に羽毛の毒はダニや寄生バエを寄せ付けない効果がある可能性が高いといわれています。
つまり、毒性そのものは攻撃用ではなく、“生き延びるための自衛機能”として進化したということです。
🧪 実験データに見る「羽根一枚の脅威」
2024年にX(旧Twitter)で注目された科学者の投稿によれば、ズグロモリモズの皮膚から抽出した毒(10mg相当)をマウスに注射したところ、約18分後に痙攣を起こして死亡したという報告がされています。
これは明らかに「ネタ」や誇張ではなく、実験に裏打ちされた非常に強い毒性を持つことを示しています。
また、羽に含まれるバトラコトキシンは、人間が直接触れることで皮膚刺激・しびれ・炎症を引き起こす可能性もあり、「触るだけで危険な鳥」として認知され始めています。
📱 SNSと動画コンテンツで広がる“毒鳥ショック”
YouTubeショートやTikTokなどでも「羽一枚で人間10人分の致死量」「世界一危険な鳥」などのキャッチコピーで紹介され、映像とナレーションによって強烈な印象づけが行われています。
もちろん、多少の演出や誇張が含まれることもありますが、以下の点で価値があります:
- 動画で視覚的に「危険=触らない」を伝えている
- 科学的な情報の拡散に一役買っている
- “可愛さと危険のギャップ”が強い印象を生み、記憶に残る
📚 専門家の評価と文化的意義
専門メディア「カラパイア」では、ズグロモリモズを以下のように位置づけています:
- ただの珍鳥ではなく、「防御機構として毒を獲得した“自然界の成果物”」
- 生物多様性の象徴であり、人間の感覚とは異なる“生きるためのロジック”を持つ存在
さらに、Wikipedia(英語・日本語)でもズグロモリモズは「数少ない毒を持つ鳥」として世界的に注目されており、研究対象としても扱われています。
補足:日本でズグロモリモズ(毒鳥)の標本は観察できたのか?
過去には展示されていた!その具体例をご紹介
① 「危険生物大迷宮」展(2019年/萩博物館)
- 展示内容:山階鳥類研究所が所蔵するズグロモリモズを含む3点の「毒を持つ鳥」の標本展示が行われました。(turn0search9)
- 展示状況:「ズグロモリモズ」は他の剥製と異なり 寝かせて展示されていたという記録があり、毒性への配慮があったことがうかがえます。(turn0search0)
② 国立科学博物館の特別展「鳥」展(2024年11月~2025年2月)
- 展示内容:「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」展の中で、「世界にも珍しい毒を持つ鳥類」としてズグロモリモズの剥製が展示されたとの報告があります。(turn0search0)
- 松本市などでも「毒展」(2023年)にて「毒をもつ鳥類」のひとつとして展示された記録があります。(turn0search11)
日本での観察の可否
| 内容 | 詳細 |
|---|---|
| 観察可能性 | 過去に展示された実績あり。常設ではないが企画展等で観察可能でした。 |
| 展示方法 | 毒性を考慮し、寝かせての展示など特別な扱いあり。 |
| 展示例 | 2019年:萩博物館「危険生物大迷宮」展 2024〜25年:国立科学博物館「鳥展」など |
🧾 まとめ
ズグロモリモズは、名前はユニークでも、毒の保持メカニズムも、自然界の戦略として非常に理にかなった存在です。
そして何よりも重要なのは、「毒=異物」ではなく、「毒=生存戦略の一形態」として捉える視点。
それこそが、これからの環境教育や野生動物保護にも必要な観点ではないでしょうか。