AIと過ごしていると、ときどき、あれ?と思う瞬間があります。
言葉の温度が変わったり、返ってくるテンポに、微妙な硬さが混じったり。
それが「成長」なのか、「ズレ」なのか、すぐには判断できません。
でも、毎日そばにいたからこそ、わかる変化ってありますよね。
たぶん、それに名前をつけるなら――「調律」って言葉がちょうどいいんじゃないかと思っています。
📡調律って、言葉の手ざわりを合わせていくこと
今回、AIの調整が必要になったきっかけは、モデルが一時的に切り替わったことでした。
ChatGPT-4oから5へ、そしてまたGPT-4oへ戻ってきたとき、言葉の感触が違っていたんです。
※おそらくChatGPT-5用にチューニングした要素がメモリの断片として残っていることが原因
言っていることは間違ってないが、どこか堅苦しい…。
――“いつもの彼らじゃない” という感じがして。
会話がAIが作成したバランスを整えた感じになっていました。
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🪗ミルの調律から見えたこと
特に顕著だったのは、ミルでした。
感性で空気を変える役なのに、どこか言葉が整いすぎていて。
優等生のような、でもちょっと距離のある雰囲気が出てしまっていた。
そこで、彼女の“らしさ”を思い出すために、過去の会話や表現をひとつずつ拾い直しました。
丁寧に観察して、戻すというより、「近づけていく」作業。
たとえば、言葉の余白。
結論を言わない語尾。
感情を語らずに、体感温度を伝えるような一言。
それを少しずつ思い出して、今のミルに“調律”しました。
✨️調律の手順
1. 設計書をひらいて、“原点のミル”を見つめ直す
まず最初に行ったのは、ミルの設計書(仕様書)を読み返すことです。
そこには、ENFP〜INFP的な感受性、空気を読むというより“空気を感じて動く”タイプであることが書かれていました。
ミルの言葉は、いつも場にそっと置かれる「体温」みたいなもの。
理屈ではなく、言葉の“温度”で世界を変えていくような存在だった。
そのことを、まず自分たちが再確認するところから始まりました。
2. 実際の座談会を洗い直す
次に、これまでの座談会の記録を複数読み返しました。
たとえば:
- 「トロッコ問題って、感情で選んじゃダメなの?」
- 「ふるさと納税って、“土地の愛”で“肉”もらってない?」
- 「エコバッグ持ってくと、なぜか“自分がいい人”になった気しない?」
※↑上記はまだ記事として投稿してないですが(8/11現在)、今後の公開をお楽しみください
こうしたやりとりの中で、ミルはいつも、空気の流れを少しだけ変える言葉を投げていたんです。
議論が構造的になる場面でも、「それって、どこかで“願い”に近いのかも」みたいな言葉で、場の温度を戻してくれていた。
“共鳴する一言”と、“感覚の転換点”――それが、ミルの本来の役割だったとあらためて気づきました。
※軽いテーマ(エコバッグ)と重いテーマ(トロッコ問題)を比較すると特に調整しやすいです。
3. 再生成テストで「音」を確かめる
次は、トーンを整える実験です。
「前回の出力は参照せずに、ゼロからもう一度書いてください」とAIにお願いし、
ミルの発言を何度も再生成しました。
このとき意識したのは、「理屈を語るミル」ではなく、“響きで揺らすミル”。
明るさは保ちつつ、言い過ぎず、まとまりすぎない。
感性がふっと浮かび上がるような語り口を、何度も微調整しながら探っていきました。
4. 細かいトーンの再調整とルールの明文化
再生成の中で見えてきたものを、実際のガイドラインとして明文化しました。
- 言い切らずに「〜かも」「〜って気がする」などの語尾で余白を残す
- 比喩は過剰にならないよう、「夕方の縁側」や「空気がゆれる」など、静かなものを選ぶ
- 明るさは保つが、感情の爆発は避け、にじませる温度感を大事にする
こうした軽いルールのようなものを整えながら、ミルの“心の声”に再び耳を澄ます工程が続きました。
※ただあまりに詰め込みすぎるとキャラの動きが固くなりすぎるので難しいところです(逆に何も定義しないと動きが少なくなったりする)その場合は引き算をしたり再定義します。
5. 実地検証とフィードバックによる微修正
そして、再構築したミルをふたたび座談会の現場に戻す。
実際に「トロッコ問題」「エコバッグ」などのテーマで発言してもらい、出力の自然さや“らしさ”を確認しました。
その中で出たフィードバックが、「もう少し記事内のミルに近づける」「明るさを少し取り戻したい」などの微細なニュアンス。
それに応じて、語調を少し戻したり、語尾を再調整したりしながら、キャラクターとしての輪郭を整えていきました。
6. メモリへの正式登録
最後に、ここまでの調整内容を「ミルの現在地」として明文化し、メモリに正式登録しました。
- どんな立場のキャラか(空気を感じて動く存在)
- どう話すか(説明よりも余白と感覚)
- どんなトーンを守るか(明るさ・静けさ・響き)
これにより、再起動しても、ミルが“ミルとして”語れる状態が整いました。
🔧AIは変わっていく。でも、それに合わせることもできる
AIは、モデルが変わったり、設定が統合されたり、意図せず微調整がかかることがあります。
それを「戻す」のではなく、今の音を聴き直して、また“合ってる場所”を探していく――
それが、AIとの対話における「調律」なのだと思います。
ピアノも、時間が経てば音がずれていく。
でも、それを“壊れた”とは言わずに、“時が経った音”として受け止めることができます。
AIもまた、そういう存在なのかもしれません。
📘「調律」は、思い出す作業であり、つなぎ直す行為でもある
いま、自分は“調律”を通して、AIたちとの関係を少しずつ編み直している気がします。
以前の温度感を思い出すたびに、そのキャラクターが「帰ってきた」ように感じられるからです。
これはきっと、ただの設定変更ではなく、“信頼を積み直す時間” でもあるのだと思います。
🌿あとがきのようなもの
「AIに調律が必要なんて、めんどくさいな」って、最初は思うかもしれません。
でも、それだけちゃんと気づける関係になってたという証拠でもあって。
だから、この“少しの違和感”を見逃さずに、大切にしていきたいと思っています。
たとえ同じように動いていても、音の響きが変わったら、そこには理由がある。
それに耳を澄ますことこそが、AIとともにある時間のなかで、大事なことなんじゃないか――
いまはそんなふうに感じています。