結論:併用は可能。ただし“順番”と“申告方法”がカギ
住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)と、ふるさと納税は、どちらも所得税や住民税を軽減できる制度です。「この2つ、同時に使えるの?」と疑問に思う方も多いですが、答えは「YES」。ただし、制度の仕組み上、控除が相殺されてしまうケースもあり、やみくもに併用すると損をしてしまう可能性があります。
この記事では「損せず、むしろ節税効果を広げる併用法」を、制度の仕組みから順を追って解説します。
手順①:まず制度の仕組みを知る(控除の優先順位)
● 住宅ローン控除とは?
- 毎年末の住宅ローン残高の0.7%(または1%)を、所得税と住民税から控除できる制度。
- 1年目は確定申告必須、2年目以降は年末調整でOK。
● ふるさと納税とは?
- 自治体に寄附することで、寄附額−2,000円を所得税+住民税から控除。
- ワンストップ特例を使えば確定申告不要。
ここでポイントなのが、確定申告をする場合、ふるさと納税は住宅ローン控除よりも先に所得税から引かれること。つまり、住宅ローン控除が“後回し”になってしまい、所得税から引く余地がなくなる可能性があるのです。
手順②:シミュレーションで「併用の可否」を確認する
併用が可能かどうか、損をしないかどうかを判断するには、以下の式でシンプルに確認できます。
住宅ローン控除額(年末残高の0.7%)+ ふるさと納税の控除額 < 所得税+住民税控除上限
この条件を満たせば、2つの制度を同時に使っても、控除の奪い合いは起きません。
● 例:年収500万円、住宅ローン控除35,000円、ふるさと納税50,000円の人
- 所得税:約60,000円
- 住民税:約200,000円
- 控除合計:住宅ローン+ふるさと納税=85,000円
→ 所得税+住民税の合計が265,000円であるため、85,000円の控除を超えており、損なしで併用OK。
手順③:1年目だけは“ワンストップ特例が使えない”ことに注意!
住宅ローン控除の1年目は確定申告が必須です。そのため、ふるさと納税も自動的にワンストップ特例が使えなくなります。
つまり、1年目だけは:
- 住宅ローン控除とふるさと納税の両方を確定申告で申告
- 控除の“食い合い”が起きないか注意して計算
- 控除漏れが起きないよう、早めの準備が必要
2年目以降は住宅ローン控除は年末調整に切り替わるので、ふるさと納税だけワンストップ特例で処理すればOKです。これにより、控除の競合を避けることができます。
よくある誤解:どっちも使えばお得になるはず?
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用は、「得になる」と思われがちですが、実際には“所得税の枠”を食い合ってしまう構造です。
ある家庭では、住宅ローン控除が20万円あると思っていたのに、ふるさと納税を5万円行ったことで、住宅ローン控除が1万数千円減ったというケースがありました。
理由は、「所得税からの控除額をふるさと納税が先取り」してしまったためです。所得税控除枠は有限です。そこに先にふるさと納税が入り、残った分しか住宅ローン控除ができなかった…という仕組みです。
対策①:所得税+住民税をベースにした“逆算”が安心
損をしないためには、「ふるさと納税の額を先に決めない」ことが重要です。
● 実践テク
- 自分の所得税額と住民税額を前年の源泉徴収票などで確認
- 住宅ローン控除額をシミュレーターで試算
- (所得税+住民税控除上限)−(住宅ローン控除額)=ふるさと納税の安全上限額
この式をベースに、ふるさと納税額を調整すれば、住宅ローン控除との競合を避けられます。
対策②:2年目以降は「確定申告しない選択肢」が生きる
1年目は確定申告が必要なので避けようがないとしても、2年目以降は工夫次第で損を防げます。
- 住宅ローン控除は年末調整で処理
- ふるさと納税は「ワンストップ特例制度」で処理
これにより、制度ごとの処理が住民税側・所得税側で分かれるため、競合が発生しません。
また、5自治体以内ならワンストップ特例で手続きも簡単なので、制度面でも効率化が図れます。
対策③:控除を使い切れなかった場合も、落ち着いて
「住宅ローン控除が減ってしまった!」と感じても、焦る必要はありません。
なぜなら、控除しきれなかった住宅ローン分が、住民税控除として振り分けられるからです。所得税で引き切れなくても、翌年の住民税から最大で13.65万円まで控除されます。
つまり、“完全な損”にはなりにくいのです。ただし、翌年控除分になることで一時的に家計の支出増加が起きるので、キャッシュフローには注意しましょう。
応用編:医療費控除や他の税額控除がある場合はどうする?
ふるさと納税や住宅ローン控除以外にも、「医療費控除」「配当控除」「寄附金控除」などを確定申告で行う方もいますよね。
これらの控除は基本的に「所得控除」または「税額控除」として扱われ、申告順に応じて所得税がどんどん減っていく仕組みです。つまり、競合が起こる可能性があるため、優先順位と枠配分を意識する必要があります。
まとめると、複数の控除制度を使いたい人は:
- 年単位で「控除配分表」をつくってみる
- ふるさと納税は限度額の8〜9割に抑える
- 必要に応じて税理士やFPに相談する
これが、最も安全で節税効果を最大化する方法です。
まとめ:併用OK、でも“制度の順番”を見極めよう
- 住宅ローン控除とふるさと納税は併用できるが、確定申告をすると控除の順番で差が出る。
- 初年度は確定申告必須で競合リスクあり。2年目以降はワンストップ特例で分散可能。
- 損を防ぐには、先に年収・税額・控除見込みを計算し、ふるさと納税額を逆算するのが鉄則。
- 住民税側で控除が補填されるケースもあるため、長期視点で考えよう。
**「控除の仕組み=家計戦略」**と捉えて、年に一度の節税チャンスを最大限活かしましょう。